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 [Aug.03,2005]

タバコ産業への知識を深めることが大切


1. タバコを取り巻く世界情勢

タイで発売されているJTのタバコ  タイで発売されているJTのタバコ

↑ 写真は、タイで発売されている日本製タバコのパッケージです。
喫煙者は、JTが外国においては、こうしたパッケージで、
タバコを販売していることを、知っておいて損は無いでしょう。
もちろん、中身は、日本で販売されているものと一緒です。

(このパッケージで、マイルドとかライトとか言われても……)

日本においては、今年7月から、警告文の表示が義務付けられました。
折りしも、ちょうどその頃、いわゆる「たばこ病訴訟」の控訴審判決が出ました。
そのため、警告文の表示を、訴訟対策と勘違いしてしまった、喫煙者が少なくありませんでした。
今まで書いてまいりましたとおり、当然のことながら、
警告表示は、WHO(世界保健機関)の「たばこ規制枠組み条約」の発効に起因するものです。

ちなみに、訴訟について触れますと、アメリカにおいては、全米50州の全てにおいて、
タバコ会社側が、タバコの害を認めて、実質的に負けており、莫大な額の損害賠償に当たっています。
損害賠償が、あまりにも莫大であるため、普通の会社ならば倒産するところですが、
タバコ産業は大丈夫でした。巨万の富を築き上げているからです。

タバコ会社は、タバコの重大な害を認識しつつも、
従来、科学的データを隠蔽・操作し、利益追求に走っていました。
タバコ産業にとって不利益なデータとは、すなわち、国民の健康にとって有益なデータに他なりません。
単に、収穫された葉タバコを、乾燥・加工するのではなくて、
喫煙者が、より、ニコチン依存症に陥りやすいように、
添加物を加えて、ニコチン摂取量を操作していた事実も明らかになりました。

国民を欺いていたとのことで糾弾され、厳しい社会的制裁を受けました。

アメリカは合衆国ですので、州単位で若干異なり、一概には言えないのですが、
日本と比較すると、タバコ1箱の値段が、およそ2〜3倍だと考えてよいでしょう。
喫煙可能な場所も、極めて限られています。
そこで、アメリカのタバコ産業は、もはや、国内での成長は見込めないため、
国外に新しい市場を開拓しました。
喫煙の規制の甘い国・タバコの害に疎い層がターゲットです。
遺憾なことに、もちろん、禁煙発展途上国の日本は格好のターゲットでした。
結局、日本は、アメリカ製タバコの輸入大国になってしまいました。
タバコ産業にとって、喫煙行為への危機意識の低い日本人は格好のカモでした。


アメリカ国内では、日本の「たばこ病訴訟」に相当するものは、既に、実質的に終了していて、
司法の面で、タバコの有害性とタバコ産業の重大な罪が確定したことを受け、
行政面で、規制を強化するのみの段階に来ています。
アメリカで既に終わっていることが、日本では、ようやく始まった段階。
残念ながら、日本が、いかに遅れているかを認識せざるを得ません。

既に、アメリカでは、訴訟において、「タバコは有害な欠陥商品」と判断され、
タバコ産業の幹部は、
「有害な商品によって、人々に耐え難い病気をもたらし、大変申し訳ない。」と謝罪しています。
今現在、日本は、アメリカでは売れなくなってしまった、
その「有害な欠陥商品」を、大量に輸入し、消費しています。

喫煙政策が進んでいる国としては、他に、シンガポール・オーストラリア・ニュージーランド等がありますが、
かつては、アメリカと比較して立ち遅れていたヨーロッパ諸国も、
いわゆる「禁煙法」を施行する等して、政策を強化しつつあります。
私は、おかげさまで、半年に1回の割合で渡欧させていただいており、
訪れるたびに、受動喫煙の危険性が減少していることが実感できます。
多種多様なので、ひとまとめに欧米と言うことはできないものの、
やはり、禁煙先進国の欧米諸国においては、料飲施設(飲食店)で、
タバコの煙に悩まされながら、食事をしなければならない可能性は、極めて低いものです。

私が、しばしば訪れるフランスは、
政府によるタバコの害を訴えるTVCMや、タバコのパッケージの警告表示強化に加え、
短い期間に2〜3倍と、急激に値上げしたため、タバコの消費量や喫煙者が大幅に減少しました。
(為替変動や銘柄による違いがあるものの)日本円にして、
1箱が、およそ、\800〜\1,000程度だと考えてよいでしょう(イギリスも同様)。
喫煙率が低いため、新幹線(TGV)の全席禁煙も、政府主導ではなくて、国民の強い要望により実現。

確かに、フランスは従来、欧州の中では、禁煙への取り組みが遅れていました。
喫煙大国と言われて久しかったのですが、現在では、屋内の公共空間は全面禁煙です。
「フランス料理」という、確立された食文化を世界に誇るフランスのこと、
レストランにおいて、飲食の妨げになるタバコの煙の存在は許されません。
いまだに、フランスが紫煙に寛容な国などとおっしゃる方は、
古いフランス映画の見過ぎではないでしょうか。今は昔の話です。
パリ市は、カフェに対しても、(青色の)禁煙ステッカーを配っています。

アジアに目を移してみましょう。
インドは映画が禁煙になりました。要するに、喫煙シーンが制限されたということ。
(ヒマラヤ山麓の)ブータン王国は、タバコの販売自体が禁止されました。
タイのタバコのパッケージは、ご覧のとおり

全世界的なタバコの販売禁止を求める声も、一部にありますが、
現時点では、これを行うべきではないと考えます。
第二の阿片(アヘン)戦争」が懸念されるからです。
戦争の勃発を心配しているのではなくて、完全に禁止してしまうと、
必ず、密造や密輸の問題が生じ、かえって面倒なことになるためです。
今は、規制の強化が最善の策と言えるでしょう。


2. 日本の常識・世界の非常識

日本の常識・世界の非常識。日本は、完全に取り残されてしまいました。
アスベスト(石綿)や薬害の問題からも理解できるとおり、
日本の行政は、危険性が指摘され、有害であることを当局が認識しても、
実害が大きくなって報道され、社会問題化して、
極めて深刻な事態に陥るまで動きません。
欧米から大きく遅れて規制したところで、既にして、手遅れなのです。

危険性が疑われた段階から動く欧米に対して、
日本の場合は、結果的に、国民の命が(実質的に)人体実験によって削られます。

タバコの害も、「静かな時限爆弾」であることに変わりありません。
しかも、爆弾を抱えている当の本人のみならず、
周囲の人間も巻き添えにします。自爆テロのようなものです。
それでも、喫煙者が、フィルターを通して吸い込む主流煙以上に有害な、
副流煙主体の受動喫煙被害に遭う非喫煙者の健康問題より、
タバコ産業や自動販売機メーカーの利益が、最優先されて来ました。

JT会長等のポストが、財務省の高級官僚の天下り先という問題もあります。
葉タバコ農家を票田にしている議員もいます。
命よりも、選挙で当選することのほうが大事。選挙命ということなのでしょう。
国民の健康を守ることよりも、業界・政治家・官僚の既得権益を守ることが、
常に優先される国。日本は実に不思議な国です。


タバコを取り巻く状況について、世界の中において、
日本が、極めて特殊な環境にあるということを知るのは、実に容易なことです。
しかしながら、喫煙者の人達の中には、国際情勢に疎い人が少なくないとの実感があります。

現実的な問題として、ニコチン依存症の人は禁断症状に襲われるため、
旅客機での長時間のフライトには、身体が耐えられないというハンディがあります。
欧米への飛行には、直行便で数十時間を要するために、
実際、喫煙するためだけに、わざわざ、乗り継ぎでつなぐ人がいます。
時間も費用もかかる、非合理的な方法ではありますが、
最初から欧米行きを諦めることに比べれば、価値のあることです。
(でも、国際派ビジネスマンとしては失格。禁煙先進国の欧米への赴任も不可能。)

また、我慢できずに、ノンストップの長距離国際線のトイレで、
隠れて喫煙して、警告の機内アナウンスを流されるより、よほどマシです。
このご時世、人目の無い狭い密室で、火気を使用する(タバコに点火する)という危険行為は、
もはや、テロリストと言われても仕方がありません。
当然、こうした迷惑行為は「航空法」により罰せられます。
(米国行き路線では搭乗前にライターを没収されます。)

仮に、喫煙者が、日本から一歩も出ることなく、
あらゆる情報チャンネルを遮断して、喫煙行為に不利益な情報に対して耳をふさぎ、
日本の事情だけしか知らなかったとしても、そうした人を置き去りにして、
タバコに関する規制は、世界レベルで、どんどん進行しています。
WHOは、ニコチン(たばこ)依存症について、『国際傷害疾病分類』において、
「たばこの使用は精神作用物質による精神及び行動の障害」と定義しています。

ただ、「喫煙者 ≒ ニコチン依存症(中毒症)患者」というイメージはあるものの、
「喫煙者 = ニコチン依存症(中毒症)患者」というわけではありません。

私は、「料飲施設における受動喫煙被害を無くすための活動
に力を注いでいるため、喫煙者との付き合いが無いと思われがちですが、
決して、そんなことはありません。
喫煙者との接点が無いと、問題の解決は難しいと考えています。
本音としては、発煙者とか排煙者といった名称で呼びたいところですが、
ここでは、一般的な喫煙者という名称を使用しています。
また、本当のところは、タバコを嗜好品ではなくて、死向品だと思っているのですが、
嗜好品という接点で話を進めないと発展しないため、妥協したいと考えています。

「ワイン&グルメ」を堪能する場面で、喫煙者と同席することもあります。
ただ、喫煙者と言っても、全員が、決して人前では喫煙しない人ばかりです。
私の知人で、週に1回とか、ごくまれにしか喫煙しない人、
1箱を2週間程度かけて消費する人、休肺日(休煙日)を設けることができる人、
勤務先を含む出先では一切喫煙せず、帰宅後、就寝前にのみ喫煙する人等がいます。
こうした人達は、ニコチン依存症患者とは言えないでしょう。
周囲の人達に受動喫煙の被害を全く与えない喫煙行為は、特に問題ありません。
大人の喫煙ができる人達ばかりなら、非喫煙者との軋轢など生じないのですが……

人前、そして、(不特定多数の)人が集まる場所では喫煙せず、
例えば、自宅等のプライベートな空間でのみ喫煙するのであれば、問題ないのです。
特に、飲食店等の、「人の口に入れるものを扱う空間」では喫煙すべきではありません。
たとえ、そこに誰も居なくても、店内が汚れます。「食」の安全が脅かされます。
お客様がいらっしゃらなくても、従業員が働いています。


飲食物を扱う現場に、タバコの煙はあってはならないものです。
喫煙者の中には、「タバコの煙のほうが排気ガスよりもマシ」といったことを言う人がいます。
でも、タバコの環境煙(主流煙+副流煙+呼出煙)には、
年間で、ディーゼル車の排気ガスや焼却炉から発生するダイオキシンの、
数十倍から数百倍の濃度のダイオキシンが含まれています。
他にも、多くの発ガン物質・有害物質を含むタバコの煙は、
有害性の点で、自動車の排気ガスの比ではありません。

そもそも、タバコが嗜好品であると言うのであれば、
車の排気ガスなんかと比較すること自体、情けないと思いますが……

タバコの煙が、有害物質のデパートになってしまう理由のひとつが、
葉タバコの生産過程では、大量の農薬や化学肥料を使う必要があるからです。
残留農薬たっぷりの葉に、添加物を加えて加工して、
さらに、点火して発煙させることにより、複雑な化学反応が起こります。
焼却炉から出る煙による、ダイオキシン汚染も問題になりましたが、
身近なところで、至近距離から攻撃して来るタバコの煙のほうが、
もっと有害で、恐ろしいものなのです。
タールの黒い雨として、タバコの煙の粒子が飲食物に降りかかるような汚染空間で、
どうして、落ち着いて食事を楽しむことなどできましょうか。

有害物質のフリカケのトッピングは、どうか、ご自宅の食卓のみでどうぞ。

たばこ規制枠組み条約」には、「タバコ農家や小売業者の転業支援」が盛り込まれていますが、
葉タバコ生産者の場合、実質的に、転作ではなくて転業でしょう。
農薬と化学肥料漬けで、荒れて土壌汚染が進行した農地で、直ぐに、転作するのは難しいようです。
タバコの需要の減少を受け、既にJTは、国内の葉タバコ農家に対して、
廃作(廃業)の希望を募っています。取扱所や工場も、順次、廃止(閉鎖)しています。

また、同条約には、「タバコ耕作による環境破壊の抑止」も盛り込まれています。
どういうことかと言いますと、葉タバコの多くは、蒔で乾燥されており、
世界で伐採される木の、およそ6本に1本は、葉タバコを乾かすために使われているからです。
1Kgの葉タバコを乾燥させるためには、10Kgの蒔が必要とのこと。
これが、森林破壊、特に、発展途上国の熱帯林を破壊するということです。
毎年、長野県ふたつ分もの面積の森林が、葉タバコを乾かすためだけに消失する計算。
(参照: 森を煙に変える方法 − 南北問題からみたタバコ経済)

日本国内においては、主に石油燃料を焚いて乾燥させているようですが、
葉タバコの乾燥のために、地球温暖化ガス(二酸化炭素)を排出するというのは問題あり。
タバコの火の不始末により、多くの森林が失われていることを合わせ、
ニコチンを体内に送り届ける注射器であるタバコ」のために、
地球規模の甚大な環境破壊が起こっていることを考えると、虚しくなります。

「企業」には、ある程度の社会貢献が求められるわけですが、
少なくとも、タバコ産業は、世の中の何の役にも立っていないように思われます。
確かに、一部の喫煙者を喜ばせているかもしれません。
でもそれは、ニコチン供給による一時的な快楽であり、
長い目で見て、顧客、すなわち、喫煙者を幸せにしているとは到底言い難いものです。


3. 百害あって一利なし

「愛煙家」という言葉がありますが、仮に、嗜好品としてタバコを愛しているのであれば、
ポイ捨てなどできるはずがありません。
地面に落ちている吸い殻やパッケージの主は、少なくとも、愛煙家とは言えません。


仮に、タバコが「嗜好品」という位置付けならば、実行するかどうかは別にして、
距離を置いた余裕のある喫煙方法が、物理的に不可能な人は、
その人にとって、タバコが嗜好品・趣味の物であるとは、とても言えません。
短いサイクルで禁断症状に襲われるため、終日、タバコが手放せない人、
つまり、余裕を持って、「心」で嗜む(たしなむ)品ではなくて、
肉体的欲求」により、タバコが必要不可欠な「必需品」となってしまった場合、
完全なニコチン依存症患者です。

喫煙者の中には、本当は禁煙したいと考えている人が少なくありません。
「止めたいのに止められない」とのことですが、
第一、「止めたい」と思うような程度のものは、その時点で、およそ、「嗜好品」とは呼べません。

ニコチン依存ということからしたら、喫煙者は「タバコ産業が生み出した被害者」です。
「タバコを吸うと、気分が落ち着く。」等と言っているのを聞くと、
馬鹿らしくて、むしろ、可哀想にすら思います。
本当は、「タバコを吸わないと、ニコチン切れでイライラする。」・
「吸うと、ニコチンが充填されて禁断症状が収まる。」だけなのに……
自らの意思に反して吸わされていることが多いのです。
つまり、常に、タバコ産業の手のひらの上にあって、翻弄されているということ。

ニコチン依存は、医学的な観点からすると、
脳の中枢神経系の本来の神経伝達物質がニコチンに置き換わる」ことで起こります。
要するに、「人体の大切な機能がニコチンという薬物に乗っ取られた状態」です。
ニコチンで中枢神経の機能を代用する身体になってしまったために、
自らの意思によって、喫煙をコントロールすることができないのですから、
まさに、タバコに支配された状態です。そして、ニコチンを摂取し続けるために、
たとえ、本当は止めたくても、喫煙者はタバコを買い続けてくれます。

タバコ会社は、再構成タバコシートやアンモニア等を、製造工程で混ぜ合わせ、
さらにニコチン依存が生じやすくなるよう、手を加えていました。
喫煙者を弄ぶタバコ会社の幹部の、ほくそ笑む姿が目に浮かびます。
タバコ会社の幹部の多くは、当然のことながら、喫煙者ではありません。
なぜなら、タバコの害を知り尽くしていて、馬鹿らしいので吸わないのです。
麻薬を扱うマフィアのボスや幹部が、自らは麻薬に漬からないのと同じ。


お得意様に直ぐに死んでもらっては困るので、猛毒のニコチンの含有量を減らしつつも、
依存性を維持できる摂取量に調整する。
消費者をニコチン漬けにして、タバコ会社に従順な優良顧客を安定確保する。
こんなに楽して儲かる商売は、タバコ産業と麻薬密売以外、他にはありません。

ニコチン依存症患者の人達も、最初は皆、健常者(非喫煙者)だったはず。
私の周囲の喫煙者の多くは、初めて喫煙した際に、
頭痛がした・気分が悪くなった・嘔吐したといった経験を持っています。
たいていの人が、「初めて吸ったタバコは不味かった。」と言います。
「何故、こんな不味いものを吸っているのか、最初は理解できなかった。」とも。
身体は正直です。有害物質を取り込むと、正常な人体は拒絶反応を起こすのです。
私は、タバコの煙で、目や喉が痛くなりますが、
煙の粒子が粘膜を傷付けることで起こる、受動喫煙による急性的悪影響です。

喫煙を始めたきっかけは、仲間から誘われたといったものが多いようです。
仲間に溶け込むために、あるいは、興味本位で始め、
最初は、身体が正常な拒否反応を示してくれていたものの、
人体の正常な機能が、ニコチンに取って代わられ、
やがて、タバコ無しでは過ごせないという、重大な障害が生じてしまいました。
タバコは遺伝子レベルで、人体を蝕みます。


受動喫煙による被害は「迷惑」どころか、何か新しい言葉を作らないといけない程に、極めて「迷惑」です。
周囲の人達が煙たがっていることを、認識できない能動喫煙者が多いのは、誠に嘆かわしいことです。
そうした喫煙者におかれましては、初めてタバコを吸った時のことを、思い出していただきたいものです。
ニコチンに身体を蝕まれていない健常者(非喫煙者)は、
正常な拒絶反応が、ずっと続いているものと認識していただければ、
多少は、周囲への思いやりも生まれるはず。

明らかに、「ニコチンに操られている喫煙者」のほうが、異常なのです。
本当は、ニコチン依存症患者のくせに「愛煙家」とは、
随分、笑わせる話ですが、実は、喫煙者自体は悪くありません。
悪いのは、悪魔のマーケティングを展開する死の商人、タバコ産業です。

禁煙の場所、あるいは、不特定多数の人達が飲食する場所のように、本来は喫煙が望ましくない場所で、
「タバコを吸わせろ。」と言ったり、強硬に行動に移してしまうのは、
本人の意思というよりは、言動をニコチンが制御しているようなもの。
だって、大切な脳の中枢神経をヤラれてしまっているわけですから、
いわば、ニコチンがしゃべっているようなもの。タバコの奴隷です。

私は、肺ガンでお亡くなりになった方のお葬式に、何度か、参列したことがあります。
故人の大好物だったとのことで、タバコがお供えしてあったり、
出棺に際して、棺にタバコを入れたりする場面もありました。
死んでからも、タバコから離れられないとは……
故人が、巨悪のタバコ産業の実態を知っていたかどうかに関わらず、
正直、虚しさと、タバコ産業への怒りを覚えます。

私は、ふだん、ワインと深く関わっています。嗜好品という観点から、
酒類とタバコを比較するのは、本当のところは嫌なのですが、
「酒もタバコも……」という一般的な言い回しがあるため、
分かりやすくするために、これからも続けてまいります。

一般的に、ワイン愛好家と呼ばれている方々の中には、
料飲サービスのプロ(Sommelier)をも上回る、豊富な知識と経験とを、身に着けた方がいます。
嗜好品ということで、あるいは、趣味が高じてワインに興味を持った方が、
生産者(造り手)や銘柄のことを詳しく知りたいと思うのは、自然な流れです。
生産地の畑の土壌や気候にまで精通している方も、別に珍しくはありません。
それどころか、生産地を訪れる方も少なくありません。
いわゆる、ウンチクを披露し過ぎると、周囲から敬遠される傾向がありますが、
ワインを飲用するうえで、自分の手元にたどり着くまでのヒストリーを知ると、
より一層、ワインを楽しむことができます。
もちろん、知識が無くてもワインを楽しむことはできますが、
知れば知る程に、ワインの魅力に、はまる方が多いものです。

しかしながら、タバコの場合、
喫煙者の人達の多くは、タバコ産業について関心が薄いように見受けられます。
知ろうとしない人が多いと言ってもよいと思います。
個々の銘柄についての商品知識も少ないようで、葉タバコの栽培農家や、タバコの製造工場についても、
あまり、興味を持っているとは思えません。
趣味としての嗜好品ならば、対象物のことを詳しく知りたいと思うのが、普通だとは思いますが……

酒類の場合、過剰摂取により、アルコール依存症・肝硬変等で身体を害するのは、
あくまでも、飲酒をした当の本人だけです。周囲への間接的な影響はありません。
それと、特にワインがそうなのですが、アルコールに弱くて飲めない体質の方等は、たいてい、関心が低く、
当然のことながら、知識が伴わないことが多いもの。
それは、ワインと関わらないので、その知識を特に必要としないためです。

でも、タバコの場合は、むしろ、喫煙者よりも、
非喫煙者のほうが、知識が豊富な例が少なくありません。
この現象を見るにつけ、受動喫煙の悪影響がいかに大きなものであるか理解できます。
タバコは、(副流煙等のため)本人のみならず、周囲へ悪影響を及ぼすので、
間接的な喫煙による被害を防止するため、タバコの害についての知識を必要とするためです。
不条理にも、他人から健康を害されるわけですから、関心が高いのも当然です。


それなのに、もうもうと発煙している、当の喫煙者本人が、タバコについての知識が乏しいのは変な話。
ただ、喫煙者としては、タバコに関する情報に対して、
耳をふさぎたくなるといった心理が、働いているのかもしれません。
知れば知る程に、恐ろしくてというよりかは、馬鹿らしくなって、
タバコを吸いたいとは思わなくなるはずですが……

百害あって一利なし」のタバコですから、害についての情報しか出て来ませんが、
タバコ会社側が事業展開するうえで、不都合な情報を隠しているため、
非喫煙者・喫煙者に関わらず、もっと、関心を持ったほうが良いと考えます。

日本は、世界の中で稀な、タバコの自動販売機のある国です。
(例えば、イタリアは既に1962年の段階で自販機の設置が法律で禁止されています。)
では、現在、酒類の自動販売機はどうなっているでしょうか。
酒類自動販売機に係る取扱指針」により、最近は見かけません。
未成年者飲酒禁止法」を遵守するため、対策が強化された結果です。
酒類関連業界とタバコ産業とでは、産業構造・官民の癒着体質が全く異なります。

これに対して、「未成年者喫煙禁止法」はどうでしょうか。
国際条約である、「たばこ規制枠組み条約」の策定に際して、
本来は、自動販売機による販売を禁止する内容だったところを、
日本は猛烈に反対して、タバコ産業と関連業界を保護しました。
警告表示も、生易しいものに変えさせました。
いったい、何を守ろうとしているのでしょうか。
少なくとも、国民の命よりも大切な守るべきものがあるようです。


未成年者喫煙禁止法」は、未成年者自身が能動喫煙することを禁じていますが、
料飲サービスの現場で働く未成年の従業員は、喫煙者の接客をさせられ、
受動喫煙の被害にさらされています。経営者の責任が問われます。

主流煙よりも副流煙のほうが、(フィルターを通さない分)より有害なのは周知の事実。
ですから、従業員、とりわけ、未成年者の受動喫煙を防止することが重要。
でも、小さな子供連れの親は喫煙席に着席し、子供の傍で平気で喫煙します。
高校生のグループが喫煙席に座ろうとすることを、制止しない飲食店があります。
酷いところになると、高校生が灰皿を要求した際に、灰皿を提供してしまう飲食店があります。
お客様の要求には決して逆らわないこと。これが、果たして良いサービスと言えるのでしょうか。